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NISAで売った分の枠はいつ戻る?復活は「翌年以降」・金額は「簿価」|2026年8月版

資産形成 公開:2026年8月12日 最終更新:2026年8月12日 著者:颯

本記事は情報提供を目的とした解説であり、特定の投資手法・金融商品の購入を勧誘するものではありません。投資信託・株式等は元本割れの可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。制度・税制の数値は2026年8月時点のもので、最新情報は金融庁など一次情報をご確認ください。枠の復活額の実際の計算は取得単価の管理方法により異なるため、個別の金額はご利用の金融機関にご確認ください。

結論から言うと、NISAで売った分の枠は「売った翌年以降」に「買ったときの値段(簿価)」だけ戻ります。売った瞬間に戻るわけではなく、値上がりした分まで戻るわけでもありません。この2点を取り違えると、取り崩しや銘柄の入れ替えを計画した年に「買い直せるはずの枠が無い」という事態になります。生涯枠を埋めきったあとのFIRE設計では、ここが実務の分かれ目になります。

NISAで売った分の枠はいつ戻りますか?

翌年以降です。金融庁のNISA特設ウェブサイトには、2024年からのNISAでは、商品を売却した場合、翌年以降売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用が可能になる、と記載されています。つまり売却したその年のうちに枠が空くことはありません。

この時間差は、年末に近いほど重くなります。12月に売っても翌年1月まで枠は戻らず、逆に1月に売れば、次に使えるのは約1年後です。売却と買い直しを同じ年に完結させる前提の計画は、この一点で崩れます。

順番の整理:①今年売却する → ②今年は枠が戻らない → ③翌年以降、簿価の分だけ総枠が空く → ④その年の年間投資枠の範囲内で買い直す。復活と買い直しは別の年の出来事になります。

戻ってくる金額は時価ですか、簿価ですか?

簿価(取得金額)です。金融庁は、年間投資枠と非課税保有限度額(総枠)は簿価をもとに計算されると説明しており、同サイトが示す例でも、売却した場合に翌年復活する金額は簿価の100万円とされています。売却して受け取る現金は時価ですが、枠として戻るのは取得金額です。

売却したときに「戻るもの」と「戻らないもの」(簿価100万円・時価150万円で全部売却した場合の考え方)
項目金額枠としての扱い
買ったときの値段(簿価)100万円翌年以降、この100万円分が総枠に戻る
売って受け取る金額(時価)150万円現金としては受け取るが、枠は150万円分は戻らない
値上がり分(運用益)50万円NISA口座のため課税されないが、枠としては戻らない

ここから導かれる性質があります。含み益が大きい銘柄ほど、売った金額に対して戻る枠は小さくなります。長く持って増えた資産ほど、同じ現金を得るために手放す「枠」の効率は下がっていきます。

復活するのは年間投資枠ですか、生涯の総枠ですか?

生涯の非課税保有限度額(総枠)です。金融庁は、この仕組みを「非課税保有限度額(総枠)の再利用が可能」と説明しています。総枠は1,800万円が上限で、そのうち成長投資枠は1,200万円が上限という内数の関係になっています。

一方、1年間に投資できる金額の上限は別に定められています。つみたて投資枠は年間120万円(つみたてNISAの3倍)、成長投資枠は年間240万円(一般NISAの2倍)で、併用により合計で年間360万円までです。

年間投資枠と非課税保有限度額(総枠)の関係(金融庁NISA特設ウェブサイト)
区分年間投資枠生涯の非課税保有限度額(総枠)
つみたて投資枠120万円合計1,800万円が上限
成長投資枠240万円
併用した場合最大360万円うち成長投資枠は1,200万円が上限(内数)

したがって、総枠が大きく空いても、その年に投じられるのは最大360万円です。1,000万円分を売って翌年に一括で買い戻す、という動きはできません。枠の復活は「買い直す余地」が戻るだけで、投入ペースの上限は動きません。

なお、2023年までのつみたてNISA・一般NISAで投資した商品は、2024年1月以降はNISAの外枠で管理され、1,800万円の総枠には含まれません。

FIREの取り崩しでは枠はどう動きますか?

取り崩し期には、「売った現金」と「戻る枠」が別々の大きさで動くことになります。生活費として時価で売却しても、翌年に戻るのはその売却分に対応する取得金額だけだからです。

簡単な概算で見ます。取得金額の合計1,800万円が時価3,000万円に育った状態を想定します。取得単価が全体で均一と仮定すると、簿価と時価の比率は1,800万円÷3,000万円=0.6です。ここから生活費として時価240万円分を売却した場合、対応する簿価は240万円×0.6=144万円となり、翌年戻る枠は144万円という計算になります。

読み取り:240万円の現金を得るために使った「枠」は144万円。含み益が乗るほど、この差は広がります。実際の計算は金融機関の取得単価の管理に従うため、金額は必ず口座の残高照会でご確認ください。
  1. 取り崩しの原資は現金そのものと考える:枠の復活は翌年以降のため、その年の生活費は支えません。
  2. 年間の買い直し上限を先に置く:翌年に再投資するとしても、投じられるのは年間360万円までです。
  3. 旧NISA分は別勘定で数える:外枠管理のため、総枠の残りに混ぜないようにします。

取り崩す金額そのものの決め方は、4%ルールと必要資産額の計算で整理しています。

銘柄を入れ替えるときは何に注意しますか?

最大の注意点は、入れ替えが1年で完結しないことです。総枠を使い切っている状態でAを売ってBを買う場合、Aの売却で空く枠は翌年以降にしか使えません。年内にBを買いたければ、その年の年間投資枠の残りを使うことになります。

そのため、入れ替えは「売る年」と「買い直す年」をまたぐ前提で組みます。空白期間に相場が動く可能性は残るため、一度に全部を入れ替えず、複数年に分ける進め方も選択肢になります。どちらが有利かは事前には決まりません。

買い直す商品を選び直す段階では、対象商品の絞り込み方から確認しておくと判断が早くなります。テーマを軸に選ぶ場合の手順は新NISAでのファンドの選び方の整理が参考になります。

枠が復活すれば売却の損は取り戻せますか?

取り戻せません。金融庁は、NISA口座で保有している商品を売却した場合に損益がなくなるということではありませんと明記しています。枠が戻ることと、確定した損益は別の話です。

値下がりした状態で売れば、その損失はそのまま残り、戻ってくるのは簿価分の枠だけです。「枠が戻るから売っても損はない」という理解は誤りと押さえておく必要があります。

制度そのものは、非課税保有期間が無期限化され、口座開設期間も恒久化されています。期限に追われて売る必要がない設計である以上、枠の復活を狙って回転させる動機は乏しく、保有を続ける判断も同じ土俵に乗ります。運用商品である以上、値下がりや元本割れの可能性は常に残ります。

よくある質問(FAQ)

Q. NISAで売った分の枠はいつ戻りますか?
翌年以降です。金融庁は、商品を売却した場合、翌年以降、売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し再利用が可能になる、と説明しています。売却した年のうちには戻りません。
Q. 戻る金額は時価ですか、簿価ですか?
簿価(取得金額)です。年間投資枠と非課税保有限度額(総枠)は簿価をもとに計算され、金融庁が示す例でも翌年復活する金額は簿価の100万円とされています。
Q. 枠が復活すれば、その年にいくらでも買い直せますか?
できません。復活するのは生涯の非課税保有限度額(総枠・最大1,800万円)で、1年間に投資できるのはつみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円の合計360万円までです。
Q. 成長投資枠だけで1,800万円を使えますか?
使えません。総枠1,800万円のうち、成長投資枠は1,200万円が上限という内数の関係になっています。なお2023年までのNISAで投資した商品は、2024年1月以降はNISAの外枠で管理されます。
Q. 売却して枠が戻れば損は取り戻せますか?
取り戻せません。金融庁は、売却した場合に損益がなくなるということではないと明記しています。枠の復活は非課税で投資できる余地が戻るという意味にとどまります。
参考にした一次情報・公的データ
FIREへの最短ルート 編集長(黒越 颯)

証券・運用業界出身のFIRE実践者。攻めのファンド戦略と、為替・FXの基礎を「これから始める人」にやさしく翻訳して発信しています。数値は執筆時点の公式情報に基づき、投資判断は自己責任でお願いします。